Farid al-Atrash, Nagat al-Saghira, Shadia
いやはやIT技術の進歩恐るべきかな。YOUTUBEなどのおかげで、今では以前は視ることの出来なかったエジプト映画黄金期の歌うスターの映像も気軽に楽しめるようになりました。そこで今回は、私がアラブ圏に滞在していた時分に聞き覚えたメロディをYOUTUBEで探してみました。まずは私の好きな映画スターにしてウードの名人、ファリッド・エル・アトラッシュ(فريد الاطرش)が唄う、1973年公開の映画"Zaman Ya Hob"の挿入歌"Fouq Ghosnik Ya Lamuuna(فوق غصنك ياليمونة)"です。音楽はしっかりアラブ調すが、リズムにのって踊る役者の衣裳はまるで欧米調という、なんというかアンバランスの妙を楽しめます。
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Bekle Bizi İstanbul(Wait for us, Istanbul)は、トルコ旅行の際に買ったカセットを聴いて気に入った曲です。哀愁を帯びたアラベスク調のメロディに、エディップ・アクバイラム(Edip Akbayram)の渋い声がぴったりの1994年のヒット曲。詳しい内容はわかりませんが、スレイマニエ(モスク)という単語が聴こえてくることから、トルコ第一の大都会イスタンブールを唄ったご当地ソングのようです。ネット上で調べてみると、意外なことに1970年代の彼はサイケ調のロック・ミュージシャンとして売れていたそうで、政治的メッセージがこめられた歌をよく唄っていたとのことです。
エジプトの人気歌手"Amr Diab(عمرو دياب)"が、1996年にエジプトだけでなく世界中でヒットさせた"Nour El Ain(Light of the Eye-Sight)"は、ワールドミュージックというジャンルを意識しアラブ・ポップにフラメンコのリズムをフュージョンした名曲。最近では多くのアラブ人ミュージシャンが世界のマーケットを意識した音楽作りをしていますが、たぶんこの曲あたりがその先駆けだったのでしょうか。彼の出身地ポートサイドに行ったことがあるのですが、スエズ運河が地中海に出る位置にあり、ベランダが大きなコロニアル風の建物が多い垢抜けた雰囲気の街並みが、彼の音楽性ともつながっているように感じます。またこの欧米のアーティスト並みに垢抜けたビデオクリップも評判になったそうです。
今回は
"SHIK SHAK SHOK"というタイトルのアラビックダンス向きの曲。CDの宣伝文句にベリーダンス用ミュージックの定番とありましたが、まさにその通り自然に体が動いてしまいそうな曲です。作者は"Hassan Abou El Seoud"という、エジプトのアコーディオン奏者とのことです(それ以上の事はわかりませんでした)。
1945年に撮られた"Salama"という映画の中で
マジダ・エル・ルーミー(ماجدة الرومي)は、私がアラブ・ポップスのよさに目覚めるきっかけになったレバノンの女性歌手。最初はカセットの写真のルックスに惹かれて買ったのですが、大人数による華麗なストリングスとアラブ風パーカッションによるオーケストラ伴奏に、よくマッチする伸びのあるボーカル(特にアラビア語特有の喉音の発音が美しい)がミックスして、心地よいサウンドを作りあげています。
渋いルックスで最近はアラブ諸国以外でも人気があるらしいレバノンの歌手、ラーギブ・アラーマ(راغب علامة)。口ひげが男性の象徴ともされるアラブ人社会で、近年口ひげをそり落としたことでも話題をふりまいたそうです。私が1997年にエジプトに旅行した時に流行っていた、ハムドゥリッラー・アッサラーマ(حمدالله عالسلامة)というテンポのいい曲のビデオを見つけました。タイトルは「おかげさまで安らかです」という意味の挨拶ことば。
濃い口ひげをたくわえた、ハードボイルドな風貌のイブラヒム・タトルセスは”アラベスクの帝王”と呼ばれるトルコの歌手。アラベスクとはアラブ風という意味で、ダルブッカの乾いた高音が威勢よくリズムを刻み、バイオリンが歌詞の切れめでせりあげるように合いの手を入れるのが特徴らしい。またアラベスクは、歌詞が陳腐だったり電気楽器と民族楽器が同時に演奏されたりと節操がないので、インテリからは軽視されているが、庶民からは圧倒的支持を受けているとのこと。
レネット・ロラネーズ(1910-1998)は、オラン(アルジェリア西部の港町)のレネット(りんごの品種名)というその名前の通り、こぶしをきかせて唄う大衆歌謡「ライ」の発祥地として有名なオランに伝わる、アラブ・アンダルース音楽の伝統を受け継いでアルジェリア、フランスで活動した盲目の歌手。スペイン、オスマン・トルコ、フランスによる統治を経験した国際都市オランらしく、アラブ、ユダヤ、ベルベル系音楽の様々な要素が融合されているようです。イスラエル建国以前のマグレブ諸国では、ユダヤ人は旧市街のメッラーという地区に集住して、多数派のアラブ人と共存していたそうで、レネット・ロラネーズの音楽は、アラブとユダヤが共存していた当時のマグレブ諸国で奏でられた、ユダヤ・アラブ音楽というジャンルに分類されるようです。
エジプト生まれの大歌手、
レバノンの美貌テレビキャスター兼歌手のダニア(دانيه)が唄う、"El Hilwa Di"(الحلوه دي)は、エジプト近代歌謡の父とされるサイード・ダルウィーシュ(1892-1923)の名曲をカヴァーしたものだそうです。キューバで撮影したらしいビデオクリップのレトロな町並みと、アラビック・リズムが絶妙にマッチしなんとも楽しい雰囲気に仕上がっています。彼女は中南米でも人気があるのでしょうか。
トルコの女性ポップシンガー、アシュクン・ヌル・イェンギが唄った1995年のヒット曲。私が1995年にトルコに旅行した時に流行していた曲で、トルコ語のタイトルの繰り返しが、なぜか英語の"アイラブユー"のように聞こえるのが不思議です。このMVはテレビ番組のようですが、落ち着いた唄い方ながら抜群の歌唱力を感じさせてくれます。また間奏に入る、カーヌーンの独奏がこれまた素晴らしい音です。
エジプト歌謡界のお祭り男、ハキーム(حكيم)のアップテンポで脳天気な歌は、どんな時でも陽気で明るいエジプト庶民を象徴しているようで、彼のビデオクリップを視ると、どれもユーモアたっぷりで思わず微笑んでしまいます。この曲のなかで何回も繰り返されるアッサラームアレイクム(السلام عليكم)とは「あなたに平安を」という意味の、世界中のイスラム教徒がよく挨拶で使う言葉。さすがイスラーム主義の強い上エジプトのミニア出身の彼らしいタイトルです(関係ないか?)。